珊瑚ガムラン曼荼羅
出演
パラグナ・グループ(ガムラン)
リアント、ボヴェ太郎(舞踊)
上映作品
音響-映像作品《珊瑚文様》2023 (音響制作:藤枝守、映像編集:神山孝史)
上演作品
藤枝守 作曲作品「珊瑚ガムラン曼荼羅」
・組曲《ガムラン曼荼羅 III》2025 (ガムラン:パラグナ・グループ)
・音響作品《Corallorium~珊瑚の場所》2025 (音響:磯部英彬)
映像インスタレーション《Coral’s Eyes》2026(ダイレクション:藤枝守)
企画 藤枝守
主催・制作 アートカフェ・コレクティブ
助成 日本芸術文化振興基金
制作協力 マイルストーン・アートワークス福岡、喜界島サンゴ礁科学研究所Coral Sound Lab
協力 総合地球環境学研究所SceNEプロジェクト
インドネシアにおけるサンゴ礁の面積は世界一だと言われています。そして、そのサンゴ礁に縁取られた海域の生態系は、海を住処とする多くの生命を支え、その土地に暮らす人々の生活にも深く浸透しています。これまでにインドネシアの民族音楽であるガムランのために数多く作曲してきましたが、あるとき、ガムランとサンゴに何らかの共通した関係があるかもしれないと思うようになりました。
二〜三年前から奄美大島の隣に位置する喜界島を拠点とするサンゴ礁科学研究所に関わるようになりました。その研究所では、サンゴ礁を形成する骨格を水中に沈めたときに、細やかに発生する気泡の音を水中マイクによって収録するという実践を続けています。さまざまなサンゴ骨格は、それぞれが固有の音響パターンを生み出しますが、その多くは揺らぎのある周期性をともなっています。そして、そのサンゴ骨格の音響に深く聴き入るうちに、ガムランの音楽が想起されました。そこで、サンゴ骨格の音響とガムランの演奏とを組み合わせた「珊瑚ガムラン曼荼羅」という構想が生まれたのです。
この公演では、円形の舞台のうえに「曼荼羅」を模して配置されたガムランが組曲《ガムラン曼荼羅》を演奏します。そして、その楽曲の前後にサンゴ骨格による音響作品が再生され、ガムランとサンゴによる「響きのタペストリー」が織り込まれていきます。さらに、そのタペストリーを縫うように二人の男性の舞踊がさまざまな軌跡を描いていきます。
サンゴ骨格を人為的に水のなかに沈めることによって生み出されるサンゴ骨格の音響。それは、自然環境のなかでは聴くことができません。しかしながら、その骨格の音響には、あきらかにサンゴという「生の営み」の記録が刻印されています。かつてのサンゴの「生の営み」のなかに実際のガムランの響きが重なり合う「珊瑚ガムラン曼荼羅」の公演にご来場いただけたら、幸いに存じます。
(藤枝守:公演ディレクター、作曲家)
曲目解説
《ガムラン曼荼羅》というシリーズでは、ガムランを「響きの曼荼羅」に見立て、舞台中央に置かれたゴングによる一打の周期にもとづいて曼荼羅の図像となった個々のガムランがさまざまなメロディック・パターンを変化させていきます。今回の《ガムラン曼荼羅》の演奏では、組曲となった8つの楽曲のあいだに《Corallorium》という音響作品が挿入されます。この音響作品は、喜界島のサンゴ骨格(石)を水のなかに沈めることによって発生する気泡の音が素材となり、円形のホールの四隅の設置された4つのスピーカーによって立体的に再生されます。さらにステージの上方のスクリーンには、喜界島のサンゴ礁の海面下の画像が曼荼羅のように写し出される映像インスタレーション《Coral’s Eyes〜珊瑚の眼》が同時進行します。
出演者経歴
■リアント(舞踊)
舞踊家、振付家、インドネシア中部ジャワ・バニュマス出身。インドネシア国立芸術大学スラカルタ校舞踊科卒業。バニュマス伝統舞踊レンゲル、ジャワ古典舞踊、コンテンポラリー・ダンスと幅広いレパートリーを持ち、世界各地で公演を行う。2006年デワンダル・ダンスカンパニーを設立以降、舞踊の振付や後進の育成にも積極的に取り組んでいる。様々な国際プロジェクトに関わりながら、2016年よりソロ作品「Medium」を世界各地で上演。2018年ガリン・ヌグロホ監督(インドネシア)によるリアントの半生を描いた「Kucumbu Tubuh Indahku - Memory of my body」(ヴェネツィア映画参加作品)が各地で上映された。故郷バニュマスに芸術センターを設立し、希少な芸能や文化遺産を保存、継承する活勤を行っている。
■ボヴェ太郎(舞踊)
舞踊家・振付家。空間の〈ゆらぎ〉を知覚し、感応してゆく「聴く」身体をコンセプトに、歴史的建造物や庭園、美術館等、様々な空間で創作を行っている。主な作品に『不在の痕跡』『implication』『余白の辺縁』『百代の過客』『CONATUS』等がある。能楽との共演作品に『消息の風景─能《杜若》─』『Reflection─能《井筒》─』『縹渺の露─能《野宮》─』『寂寥の薫─能《楊貴妃》─』等。劇場作品の他『微か』(世田谷美術館)、西ジャワの古典歌曲トゥンバン・スンダとの共演、ルイ・ヴィトンとの共同制作による映像作品、等。藤枝守作品『ガムラン曼荼羅』、『玉垂』公演に出演。
■パラグナ・グループ(ガムラン)
1985年結成。インドネシア・スンダ(西ジャワ)音楽のグループとして、東京を拠点にガムラン・ドゥグン、トゥンバン・スンダの演奏活動を行っている。スンダの音楽家との共演も多く、インドネシアのガムラン・フェスティバルにも多数参加。古典曲の他、ルー・ハリソンや藤枝守作曲の現代作品も精力的に演奏し、幅広い活動を展開している。2020年、藤枝守作曲「ガムラン曼荼羅Ⅰ」初演(トーキョーコンサーツ・ラボ)。2023年、「ガムラン曼荼羅Ⅱ」初演(自由学園明日館)。同年「サントリーホール・サマーフェスティバル2023〜En-gawa」出演。2025年、「ガムラン曼荼羅Ⅲ」初演(トーキョーコンサーツ・ラボ)。CD「ガムラン曼荼羅/藤枝守」(MAM-0003) をMilestone Art Worksより発売中。YouTube「Paragunaチャンネル」を開設し、随時配信中。paraguna.com
■藤枝守(作曲)
作曲を湯浅譲二やモートン・フェルドマンらに師事。植物の電位変化データによる《植物文様》を展開。著書に『[増補]響きの考古学』(平凡社ライブラリー)やamazon電子書籍『孤高の響き』(字像舎)など。TZADIKから3枚のアルバムのほかにSarah Cahillのピアノによる《Patterns of Plants》、砂原悟による《クラヴィコードの植物文様》、西山まりえによる《ルネサンスの植物文様》、パラグナによる《ガムラン曼荼羅》など多数。最新のアルバムはメゾソプラノの野々下由香里をフィーチャーした《枯野:植物文様ソングブック》。今年(2025年)は、ミニピアノとガムランによる「Piano×Gamelan Concerto」、神奈川県立音楽堂の制作による「サンゴ・ガムラン神楽」を企画。また、来年は、2月に福岡市警固にあるイエナギャラリーで『発酵温浴展:サウンドインスタレーション〜甕の音なひ』を開催予定。九州大学名誉教授。Ph.D. in Music (University of California, San Diego) 。
参考資料
●喜界島サンゴ礁科学研究所 Coral Sound Lab(サンゴ音響ラボ)
奄美大島の東に隣接する喜界島は、サンゴ礁が隆起した島。「サンゴの聖地」とも呼ばれるほど、サンゴの研究に適しています。2014年に設立された「喜界島サンゴ礁科学研究所」(理事長:渡邊剛、所長:山崎敦子)は、日本唯一のサンゴ礁の研究に特化した拠点として、地球規模の気候変動解析や未来予測の研究活動を実践しています。2年ほどまえに特別研究員となった藤枝守は、研究所に保管された多くのサンゴ骨格(石)に対して、水中マイクによる音響収録を開始。そのいくつかの音響ファイルは、音響-映像作品やサウンドインスタレーションの素材として使用されています。また、研究所には「サンゴ音響ラボ(Coral Sound Lab))が開設され、科学研究費「サンゴ水中音響による芸術表現の実践研究」(25K03769)によるアートプロジェクトが進められます。
●サンゴ骨格音響による作品紹介
Coral Patterns no.1 珊瑚文様no.1 2024
Coral Patterns no.2 “UFUYAGUCHI” 珊瑚文様no.2「ウフヤグチ(太谷口)」 2024
炭酸カルシウムを成分とするサンゴ骨格は、サンゴの種類によってさまざまな内部構造をもっています。 また、海洋のさまざまな環境特性や変化がサンゴの成長する過程に作用するため、サンゴ骨格は、膨大な過去の海洋環境の変化を記録しているともいわれています。このサンゴ骨格を水中に沈めて骨格内部から放出される気泡が生み出す音響にもとづく《珊瑚文様》という音響-映像作品が制作されました。《珊瑚文様 no.1》では、海面下のサンゴ礁の静止画や動画をもとに神山孝史によって映像編集され、《珊瑚文様no.2》では、サンゴ礁が隆起してできた「ウフヤグチ(太谷口)と呼ばれる鍾乳洞の上方部分の画像が映像編集されています。
●関連イベント:サウンドインスタレーション
《Corallorium~珊瑚の場所》 sound installation by Mamoru Fujieda
イエナギャラリー(イエナコーヒー内:福岡市中央区警固2-15-20)
2026年2月20日(金)〜3月1日 17:00>>21:00
入場無料(one drink order要)
2月20日(金) 19:00 オープニング・トーク「珊瑚の耳」
「珊瑚ガムラン曼荼羅」公演のプレヴューとして開催される藤枝守によるサウンドインスタレーション。音響作品《Corallorium》を構成するさまざまなトラックを再構成して、ホワイトキューブのギャラリー空間を4チャンネルによってサンゴ骨格音響を立体化する試みとなる。
| 会場 | アクロス福岡 円形ホール https://www.acros.or.jp/r_facilities/arena.html 〒810-0001 福岡市中央区天神1-1-1 福岡空港から天神まで地下鉄空港線で11分 JR博多駅から天神まで地下鉄空港線で5分 西鉄福岡天神駅から徒歩10分 地下鉄空港線天神駅から徒歩5分(16番出口直結) 地下鉄七隈線天神南駅から徒歩7分(5番出口) バス停アクロス福岡・水鏡天満宮前から徒歩0分 天神4丁目から徒歩3分 天神中央郵便局前から徒歩5分 ※Googleマップの仕様により場所名が異なって表示される可能性があります |
|---|---|
| 入場料/料金 |
有料 3,000円 |
| お申込み | 電子チケット 第1回公演:http:teket.jp/4937/61074 第2回公演:http:teket.jp/4937/61360 イエナコーヒー警固店(福岡市中央区警固2-15-20) |
| お問い合わせ |
イエナコーヒー(警固店) TEL 092-982-1007 |



